医療事故が頻発している近年、医療行為のなかでも占める割合の大きい注射や点滴について、ミスや事故を無くすためにはなにに注意すればよいのか、それぞれの場面において安全対策を考えていきます。
医師から採血の指示が検査伝票で出された場合、いつ、どの患者に、どのような目的の採決を行うのかを検査伝票から正確に読み取らなければなりません。
そして検査目的により検体容器が異なるため、指示された目的に適した容器を準備し、貼られたラベルに正確に患者名をフルネームで記入します。
この場合、患者間違いを防ぐためにも採血の前に記入しておくことが大切です。
また、医師の口頭による指示は間違いのもとになりやすいため避けるべきですが、緊急時や急変時に口頭で指示が出された場合には、指示を復唱し「○×さんに△□の採血ですね」と、確認の会話を実施することが重要です。
コンピュータによるオーダリング・システムが導入されている医療機関の場合、翌日の採血のオーダーは医師がコンピュータに入力後、検体検査室から患者名と検査名がプリントしたラベルが貼られた検体容器が病棟に搬送されてきます。
緊急の採血の場合は医師がオーダーを入力後、病棟に設置してあるラベルプリンターから検体ラベルを出力し、医師あるいは病棟クラーク、看護師がラベル貼りを行います。その場合、検体ラベルにプリントされている検査名と検体容器を確認し、貼り間違えの内容に注意することが大切です。
検体容器には様々な種類があり、検査目的によって異なります。もしも、指示された目的に適さない容器で採決を行った場合には、やり直しが必要となり、患者に再度苦痛を与えてしまいますのでこうした事態は避けなければなりません。
オーダリング・システムの場合、ラベルには容器のキャップの色が記されているので、ラベルに記されている色と容器のキャップの色が一致しているかを確認しますす。検査伝票で出された指示の場合は、間違いがないように検査伝票の種類や検査目的と容器の種類を熟知しておく必要があります。
しかし、数多くの容器の種類や複雑な内容の検査もあります。その対策として、検査伝票あるいは採血目的と検体容器を一覧表にして誰もがわかるように表示しておくことも、ポイントとなります。
クロスマッチ用採血の場合、医事コストに関係しないという理由からコンピュータによるオーダリング・システムに載りません。そのため、輸血を実施する患者からクロスマッチ用採血を行う場合、医師が記入した血液製剤請求伝票の患者メイト検体容器に書かれた患者名が一致しているかダブルチェックすることが重要です。
特に、輸血に関しては重大な医療事故につながる危険性があることを認識し、血液型採血についてはもちろん、クロスマッチ用採血においても指示受けの段階から細心の注意を払うようにしましょう。
いくつかの確認行為の中でも、本当にその患者で間違いないかどうかの確認は重要であり、「患者間違い」が意外に多いことを知っておきましょう。何よりもまず、「本人確認」が必要です。ベッドネームやリストバンド等で確認したり、呼名したりという方法が一般的ですが、他に有効な方法として、本人から名乗ってもらうということがあります。医療者側からの呼名だと自分と違う名前を呼んでいるのに、なぜか、「ハイ」と応える患者が少なからずいます。
しかし、これで「本人確認」OKではありません。対比させる拠り所となるものが必要となります。病院によって、それが検査伝票であったり、指示票であったり、検査ワークシートであったりします。それらのものに記されている患者名と合っているかどうかが肝腎なことです。
したがって、採血時には必ず、それらの照合確認できるものを持参するようにします。視覚的に確認できるものを持たずに採血に臨むと、採血すべき患者ではなかったという、思い込みによる患者間違いが起きる可能性があります。
また、同姓患者が存在するときもあり、どの確認方法であれ、フルネーム確認・フルネーム呼称が徹底されなければなりません。「検査伝票」「検体容器」「患者」の3点確認を「準備するとき」「採血前」「採血後」の3度実施するように提唱されていますが、実施時である「今ここ」で、検査伝票の患者名と検体容器の患者名と一致させ本人確認しなければ、採り終わった後では、たとえ、間違った患者から採血していても、後で検体を見ることだけでは間違いに気がつくことは難しくなります。
さらに、採血に適した正しい部位の静脈から、正しい角度で刺入することは基本的な技術であり、基本的な確認事項となります。また、きちんと駆血し、十分血管を怒張させて刺入しなければ危険であり、スムーズな採血は行えません。刺入により、しびれ感や異常な疼痛が発生していないかも留意する必要があります。
そのほか、点滴している側、乳がんの手術側、麻痺側、透析シャント側からは採血を避けるべきであり、基本的な知識として忘れてはいけません。該当患者がいるときには、情報の共有化を心掛け、注意を促す方法をとるようにします。
抜針後の止血処置にも配慮が必要です。アルコール綿で2~3分しっかり圧迫し、その後観察して止血を確認します。自分で圧迫していただく患者には指導が必要となります。